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8月13日



何度でも言うが

FUJIと会うという事は過酷である。
別に俺自身が覚悟していればいいことであり、ここで言う必要は全くもって無いなのだが、
そこをあえて世界に発信しておきたい。
FUJIと会うという事は過酷なのである、と。

最近の週末はいつも用事が詰まってて、平日も用事と仕事が詰まっててで、たまに仕事だけしか無い日があると「今日は休めるぞ!」と感動する日々を過ごしてるんですわ。
そんな中でですよ、FUJIから電話がありまして「日曜にそっちに行く用事があるんだけど、お前暇だろ?」なんて言うんです。
髪も切りにいけない程忙しい時間を過ごしてる俺に対して緊張感のカケラも無い声で言うんですよ、たわけ者が。
この年中煩悩男が何をほざいてるんだと、俺は頭に血が上りましてねぇ、「日曜は仕事だ、土曜ならなんとか」とビシっと言ってやったわけ。
ただ土曜も午前中から用事があって何時までかかるか分からないし、
おそらく3時くらいには終わるんじゃないかと思うが断定は無理。
つうか、土曜はお前仕事じゃないの?

「半休を取ったから土曜でも午後から大丈夫」

ほんとこいつは自由だよ。
半休を取ってまで何がしたくてこっちまで来るんだろう。

「神代植物公園にちょっと、な」
「あぁ……なるほど」

神代植物公園とはうちから自転車で行ける位の距離にある場所です。
駄文で何度か書いたことがある蕎麦で有名な深大寺の隣にあるかなり大きな植物公園で、バラが好きな人には有名な所らしい。

FUJI君はね、最近ガーデニングに凝り始めてるんですよ。
本人を見てそんなオサレな言葉を使うのは憚れるのですがね、
むしろ日本語で園芸と言えば少しは似合うかもしれない。
はなまる奥様も憧れる綺麗な花々を、自らの手で愛おしみながら水をあげ、土の配合を考え、日当たりの長さを調節し、蝶よ花よと大事に育て上げる・・・それがガーデニング。
ハーブを育てて部屋の中でゆったりとアロマセラピー。
野菜なんかを育てたりなんかして。
オランダ風の頭巾とかスカート穿いてジョウロ片手に踊ってみたり。
そんな雰囲気の事をFUJI君はなさっている。

なんてことは勿論無くて。

FUJI君は植物を育てるにもちゃんと自分の背丈にあった、人の斜め下辺りのところに興味を持つわけで。
なにかといえば、食虫植物。
水を吸うだけじゃ飽き足らず、光合成するだけじゃ飽き足らず、太陽の光だけを浴びるだけじゃ満足せず、おしべだめしべだなんて細かいことはどうでもいい、虫を喰らって栄養分と成す事が我が進化の証!
葉っぱを生やした元祖肉食系。
それが、食虫植物。

皆さん、FUJI君は今、食虫植物に夢中です。
神代植物公園では植物のフリーマッケット?みたいなのが開催されていて、土日に売り出されているんだそうですよ。
その為に彼は半休を取ってまでこちらにいらっしゃると、そう仰っているのです。
そして呼び出されたってことは口八丁手八丁で俺を食虫植物の世界へ巻き込もうという腹ですね!

会っちゃいけない。

実のところ俺は以前から食虫植物の事は聞いていまして、その時にちょっとノリノリで聞いてしまっていたのですよ。
俺にそんな気は無いけども、FUJI君的にはここでもう一押しすれば食虫植物仲間に出来ると考えるだろうとは思ってたんです。
話しを聞いてる分にはいいけど育てる気は毛頭ございません。

ここで会っちゃったらなし崩しで巻き込まれるんだろうなぁ。

いや、ま、会える可能性は低いしね。
なんせこっちは忙しい身。
植物公園は4時に閉園するらしいし、それまでに用事が終わる可能性はほぼ無い感触を持ってるし。
会えたらいいねっつー流れで終えて、結果的に会えませんでした。 うん、そういうシナリオでいこう。


そんな訳で当日。
朝から誰からかは知らないが電話が鳴り響く中、案の定用事が終わったのが4時半頃。
とっくに植物公園は閉園を迎え、誰かの泣きそうな電話も入りましたが、こればっかりは仕方無いよねーってなもん。
じゃ、そういう訳で残念でしたということで終わるかと思ったんですけどね、
用事も終わって電話をしてみたらFUJIくん、会いたいと仰る。
すんげえ疲れてんだけどなー。
折角近くまで来たんだし、お茶くらい・・・と考えて会うことになりました。

んで、会ってみれば今度はすぐに出かけようと仰る。
車で1時間程行ったホームセンターに食虫植物が売ってる所があるらしいからそこへ行こうと。

ふざけんなよFUJI。

どんだけ情熱をぶつけてきてんだお前は。
俺はFUJIの話しを面白く聞かせてもらったが、買ってみたいとか見てみたいとか、育ててみたいとかひとっことも言ってないんだぞ。
そんな俺を、ただ自分の好みに巻き込みたいがためにどこまで突っ走ってるんだ。
それも、あるらしいって。
確定情報でも無いのかよ。 置いてない可能性もあるんだね。
こっちは疲れてんだよ、もう休みたいんだよ、むしろ寝たいくらいのもんなんだよ。

1時間後。
ホームセンター到着。
もう俺、げっそりしてるよ。
FUJI君は元気一杯。
一応食虫植物は置いてありましたよ。
その前で1時間半くらい話しをされましたよ。
限界を感じて近くの喫茶店に入れこんでやりましたが、そこでも1時間くらい話しをされましたよ
8割以上食虫植物の話しでしたよ。
死ぬかと思いましたよ。

だが、まだここからである。
短くまとめるが、時間の感覚を考えながら噛み締めて欲しい。

その後FUJI君は我が家に移動し、当たり前のようにWWEのDVDを取り出しました。

9時間後。
倒れるように寝ました。

3時間後。
FUJI君が起き出して帰っていく音を聞きながら寝続けました。

数時間後。
仕事に向かうために起きました。


玄関を出ると



玄関先に何かが置いてありました。






あいつが玄関先に置いていくものは最悪のものばかりだ。





FUJIと会うという事は過酷である。